美杉の自然が教えてくれたこと

僕は生まれも育ちも美杉町というところなんです。兄弟は、僕一人で。

子どもの頃の遊び場なんて、山と川なんですよ。今は入れないけど、雪の日以外は家のすぐ近くの山に行って遊んだり、ときにはお手伝いをしたり。

夏はもう昼ご飯も食べやんと、ずーっと朝から夕方まで雲出川で泳いどったね。あとは、川に釣りにも、よう行ったりな。近所の酒屋さんに釣り道具が売っていて、糸から針から竿から、何もかも揃うんよ。だから、酒屋に行けばいつでも買えるから、学校から帰ってきたら、そのまま川に釣りに行くとか、そんなのしょっちゅうでした。

その他は、山で基地を作ったり、奥の方までどんどん探検しに行ったりとかな。迷ったらあかんので木に印をつけたりして、「これで戻れるな」って工夫したりしてね。

常に山か川しか遊ぶ場所がなかったんでね。公園とかそんなのないしな。田舎やから(笑)。

田んぼのグラウンドで、野球に明け暮れた日々

小学生の頃は、田んぼで野球もしてました。稲刈りが終わった10月頃には田んぼが空くんで、そこでやるんです。まあ、ドロドロになるけどね(笑)。同級生とか、近所の前後2学年違う子らとずっと遊んどった感じですね。

中学以降はクラブ活動しかすることがなかったのね。僕は野球部で、ピッチャーやったんです。遊ぶ時間がないぐらいクラブ活動をしよったな。正月の2、3日ぐらいしか休みがなかったんちゃうかな。中学の先生が厳しくて、でもよく見てくれる人やったもんで、そのおかげで三重高校に野球で行けた。そういう意味では、野球に明け暮れとったんですね。

華やかな松阪の記憶と、静かに変わる美杉の景色

学校を卒業して車に乗れるようになってからは、松阪によく行きました。松阪にはデパートがいくつもあって、駅前の三交ショッピングセンターや、大丸、近鉄ストアとか5階、6階建ての店が並んどって、行くだけで楽しかったですね。松阪駅前にベルタウンができた頃も、よう覚えてます。今とはだいぶ景色が違うけど、あの頃の賑わいは今でも印象に残ってるな。

(上)現在のベルタウン(外観)、(下)現在のベルタウン(内観)

一方で、美杉の風景は、ぱっと見はそんなに変わってないように見えるんですわ。でも、昔はスリッパで行けた山やのに、今はもうそれでは入っていけなくなったな、と感じますね。

山の土地もだんだん人の手が入らなくなってきて、木が倒れたり、風で折れたり、山の表情が少しずつ変わってきとるんやろなって思います。山に何かしに行こう、っていう気持ちになりにくくなった、それが一番の変化かもしれません。あんだけ遊んだ山と川が、今はもう遊ばれへんのはちょっと寂しく思います。

昔は、山と川と田んぼくらいしか遊ぶ場所がなかったけど、それがあれば十分やった。お金はいらないし、体力もつくし、いいことばっかりやったけどな。今は時代が変わったで、同じようにはいかんのは分かっとるけど、それでもあの頃の遊びは良かったなと思います。

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