福居町の子どもたちと、だんじり

小1でだんじりの練習に参加し始めたのは、昭和27年。今から60、70年ぐらい前かな。福居町の子どもは全員、小1になったら必ずだんじりの練習に入るんやわ。小学校6年生までは鐘、中学になったら太鼓。高校生は、俺らの時分は笛やったかなぁ。楽譜とかそんなの一切ないんで、教えてもらって、ただ記憶。下手なやつは、本番で良ぇとこは絶対鳴らさしてくれへんよってな。

小学3年ぐらいの時かな、俺もちょかつき(落ち着きのない様子)やでさ。鐘たたく「バイ」でやな、楽器を教えてる中森さんっちゅうおっちゃんにいらんことして、パコーンとどつかれて。それがあって、「こんなんもう、やめやわ」って。

「バイ」を手にする飯代さん

それからだんじりの稽古には、高校生になっても行かへんだ。ただ、だんじりを引っ張るのは義務やからな。仕事で行ってた大阪からまた地元へ帰って来た時にも、引っ張ることはさせてもらってた。

俺らの時代は、家に風呂あらへんので、毎日近い風呂屋に行ってた。福居町には、風呂屋はなかったしな。あれは西町になったのかな。丸万温泉か。その銭湯行ったら、前の会長やらに会って「今年から来てやー」とか言われて、「はいはい」って言った段取りでずっと、楼車員(ろうしゃいん)とかをさせてもらった。

楼車員(ろうしゃいん)・・・楼車(だんじり)を曳く人や、楼車の運行に関わる人たちのこと。

丸万温泉跡地周辺

俺の若い時に、万町を抜けて、それまで全然行ったことないようなところまで行ったことがあった。「鍵屋の辻」まで行くんやで。1キロ以上先のそこまで、だーっと引いていったわ。道がコの字形に曲がってるとこは、だんじり(の進路)を曲げやんならんもんな。道路が舗装されていないところもあったから、だんじりを引くのがかなり重たく感じるところがあった。

長いこと会長してくれてる人に「なんであんなとこまで行ったん」って聞いたら、「偉いさんに急に、『金出したるさかい、うちのとこまで来い』って言われてなあ、それで行った」と言うてたわ。

変わったところと変わらないところ

福居町のだんじりは、鐘を鳴らす人が前に4人、途中で交代していかないと大変やもんで後ろにも4人。太鼓は2つやけど、これも交代が欲しいから最低4人は乗る。で、笛を吹く人はだんじりをぐるっと囲むように、8人。総勢20人ぐらいは乗ってる。

でも、だんじりは各町によって違うで、小さいところは控えの人が乗れへんから、停めてはしごで人が入れ替わんねん。そういうだんじりの後ろにつくと、しょっちゅう停まんねん。だんじりの順番はくじやでさ。そんなんの後ろにおったら、自分とこも停めてからまたイチから動かさんならんとか、めんどくさいな。

だんじりの幕には繊細な刺繍で三十六歌仙が描かれている

昔と今でだんじりの変わったところは、私が楼車員してた時に、古なったロープをさら(新品)に変えた。麻は値段が高いし、せやから白いナイロンのロープに決めた。「福居町はロープは長いけど、ナイロンの白やで。そんな町はない」って文句言われた。なんでかって、白はやっぱ汚れるやん。俺はそんなん関係ないと思うけどな。長い方が引っ張りやすいし、あんまり短いと、前の人の足踏みそうになる。

明治くらいの昔は、町内の者は引っ張ってないんやわ。だんじりは親戚やら集めて、祝い事としてしてた。それでその当時、稲刈りが終わった人らが雇われて、だんじり引っ張りに来てたんちゃうかな。そんな時分は、長男しか上に乗せてもらえないんやけどな。

女の子が乗せてもらえるようになったのは55、56年くらい前からやな。それまでは長男しか乗らへんかったけど、男なら誰でもになって。それでも人が足らへんで、女の子も鐘をたたきに来たわ。

「好っきゃない」だんじりを続けていた理由

町内に住んでたら、だんじりに対する引っ張り手はもう絶対に出やんとあかんねん。それぐらいせんと、引っ張り手がいやへんの。仕方なしに行く人もいる。そうは言っても行かへんっちゅう奴もいるし、言われる前から参加する人もいるし、どうしてもなまくらで行かへんってやつもいるからな。

俺は絶対出てた。義務みたいなもんやからなぁ、ある意味。人に来いって言うとんのに、俺が「あんなもん行かへん」って言うたら怒られんで。それに、祭りの時に顔出してへんだら、「あいつ大丈夫か?」「顔ぐらい出せよさ」って、そうなる。ただ、80歳になったらもう定年みたいなもんやで、俺は去年からもう参加しやへんよ。

俺は、まぁ……別にだんじり好っきゃなかったわな。好っきゃないけども、まぁ、言われた役だけはした、ぐらいやな。そら、好きな人もいるで? だんじりは何百年の前のもんやろ。この「何百年」というのに携われるのが好きな人もいるわな。鐘なんか鳴ると、嫁さんらは「ああ、来るのか」って見に行ってたけど、もう俺はようけ(たくさん)聞いたから良ぇかと思って。

町のあちこちに、だんじりを収める蔵がある

せやけど、だんじりの鐘や太鼓は、今でも聞き分けはできるわな。「これは福居町の音やな」とか。町によって、みんな違うよ。まったく違う。福居町の囃子は、俺自身は好きやなぁ。自分がずっとそれを聞いてたさかいか知らんけどな。

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