体力的にきつい、常に多忙で大変だ。「介護の仕事」と聞くと、そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、それは介護の仕事について、知らないことが多いからではないでしょうか。「Pride」では、実際に現場で働く方々に話をお聞きし、介護の仕事について語っていただきます。介護の仕事に誇りを持ち、日々奮闘する中で育まれる利用者さんとの絆や、使命感。介護従事者たちの熱い想いをお伝えします。

今回ご紹介するのは、株式会社ライフ・テクノサービス(LTS)伊勢営業所の所長・谷本將太(しょうた)さん。お守りを製造する企業から福祉業界に転職したというめずらしい経歴の持ち主。谷本さんは、なぜ福祉業界を選んだのでしょうか。

高齢者に恩返しができる仕事を

鳥羽市に生まれ育ち、高校・大学は、伊勢市にある神道系の学校に進学した谷本さん。お守りを製造・販売する会社に入社し、約15年にわたり営業と製造現場を兼務していました。得意先は全国の神社仏閣。そのため、年に2~3回は長期の出張に出て営業活動を行い、戻ってくると製造に従事するという日々。結婚をしたものの、家族との時間が取れず、娘さんは谷本さんの顔をなかなか覚えられなかったそうです。

そこで長年勤めた会社をやめ、転職することを決意。これまでのスキルを活かしたいと営業の仕事を探していたところ、LTSに勤める知人から声をかけられました。営業職(福祉用具専門相談員)を募集していることを聞き、「どんな会社なのだろうか」と興味を持ったのだそう。

「介護というと大変なイメージがありましたが、その方がこの仕事は誰かの役に立てている喜びが大きいということ、想像しているような大変さではないと思うよなどのアドバイスをくれたので、トライしてみようという気持ちになりました。これまでお守りの製造現場で高齢者と接する機会も多かったことから、皆さんの生活の助けになれる仕事ができたら嬉しいなという思いもあり、LTSに転職することにしました」

高齢者の目線で話を進める

転職後、谷本さんが一番驚いたのは、介護保険などの申請手続きなど作成する書類の多さ。初めは1枚作るのに30分以上かかってしまい、先輩に注意されることもたくさんあったそう。

「これまで15年も別の会社に勤めて、しかも管理職だったので久しぶりに誰かに怒られました…(笑)。しんどいなと思うところもあったんですが、怒る人もいれば慰めてくれる人もいて、本当に良い環境で育ててもらったと思います」

入社して1ヶ月後には、福祉用具専門相談員の資格取得のため、みっちりと50時間の研修を受けます。資格を取得し、ようやく営業として独り立ち。合間をぬって、福祉用具のメーカー名や特徴などを覚えていきます。

「福祉用具って本当にたくさんの種類があるんですよ。手すりをつけるにしてもメーカー違いでさまざまな種類がありますし、転倒予防のためには家のどこに、どの長さをつけるのかなどを考慮して選ばないといけません」

学んで得た知識を活かし、高齢者が安全に暮らすためにはどんな福祉用具が必要なのかを判断し、提案。ご家族やケアマネジャーと連携をとりながら、介護保険の制度を使って、補助金の申請などのサポートを行います。

大切なのは、高齢者、そのご家族の目線で話を進めることだと谷本さんは言います。

「僕らの仕事は、玄関の手すりだけじゃなくてお風呂、トイレ、寝床…生活の奥にまで立ち入らせてもらうようなものだから、相手を信頼できないと不安な気持ちになると思うんですね。だからこそ僕は、まずしっかり自分の自己紹介をすることを心がけています。出身地が同じだと『あんたも鳥羽なんか〜!』と興味を持ってくださるんです。まずは少しでも僕のことを知っていただいて、相談しやすい存在になることを大事にしています」

苦難の末、営業職でトップに

ようやく仕事が軌道に乗ってきた入社2年目。事務所内で退職や異動が重なり、福祉用具専門相談員の人手が少なくなってしまった時期がありました。通常なら4人で分担して病院や介護施設を担当するところ、谷本さんを含め2人だけになってしまいました。朝から晩まで走り回って対応に追われる日々。しかし、どんなに仕事量が増えても、利用者一人ひとりにかける時間は減らさないように、事前準備を徹底して行っていたそう。

「前日までにそれぞれの利用者さんの居住環境や、健康状態などを考慮して資料を揃えたり、質問の返信を考えておくようにしました。急に対応しないといけない案件も入ってくるので、できる準備をしておくこと。このときの経験は今も役立っています」

こうした丁寧な対応が認められ、ある病院では院内にいるすべてのケアマネジャーから「谷本さんにお願いしたい」と声がかかりました。

「病院に入院されている方の中には、最期は家で過ごすことを希望される方もいます。私はそういった方の対応をさせてもらうことも多々あったんですが、亡くなったあとにご家族やケアマネジャーさんから『谷本さんとこでベッドを借りれたから、家で最期まで過ごさせてあげられた。本当に良かったわ』というお言葉をいただくことができました。すごく忙しくて大変な時期でしたが、この仕事について本当によかったなと思ったんです」

入社4年目には、年間1位の成績を納め、社長賞を授与されるまでに。谷本さんのこうした真摯な対応、そして利用者の方々からの信頼を得た結果が数字となって現れているのではないでしょうか。

福祉用具で生活をサポートする

現在は谷本さんの背中をおって入社した前職の後輩もメンバーに加わり、充実した日々を送っています。そして昨年は、社内で一番の成績を納めた営業所として表彰されるまでになりました。

「各自担当することは決まっていますが、みんなで助け合いながらやっています。これまではベッドを1人で納品しようと30分ほどかかっていたところが、配送、納品の担当部署ができたおかげで、納品にかかる時間が短くなったり、その時間を利用者さんのフォローに充てられるようになったので、今後はもっと福祉用具専門相談員としてやるべきことに取り組んでいきたいと思っています」

そして伊勢営業所の所長となった今、後進の育成にも精力的に取り組んでいます。

「私自身、この仕事にとてもやりがいを感じているんです。自分たちがやっているのは、高齢者の方達が介護保険を使って自分の生活がしやすいように環境を整えるお手伝いをしているだけのこと。いわば当たり前のことなのに、ありがとうと感謝されるんです。それってものすごく価値のあることじゃないですか。大きな怪我をしないように、少しでも生活がしやすくなるように。福祉用具で生活をサポートできるというのは、僕らしかできない仕事じゃないでしょうか」

やりがいを感じる仕事なのだということを後輩たちにも常に伝え続けているという谷本さん。これまでの経験をもとに、後輩たちの苦労や悩みなどを聞き、長く楽しく働ける職場環境をつくっていきたいとのこと。

「今後は営業所はもちろんのこと、エリアを跨いで、気軽に相談してもらえるような存在になりたいと思います。福祉用具専門相談員のひとりとしても後輩たちに負けず、まだまだ頑張っていきますよ!」

谷本 將太 さん

株式会社ライフ・テクノサービス 伊勢営業所

レンタル事業部 アシスティブプロダクツ課

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