
神様に祭囃子をささげる石取祭
桑名は、1600年の初めに戦国武将として有名な本多忠勝さんが町割り※をした時についた町名がほとんど今も残っているんです。伝統を繋いできているというのがすごいところですよね。
※「慶長の町割り」と呼ばれる、大規模な町の整備。

桑名の石取祭(いしどりまつり)も400年以上続いています。メインは春日神社の楼門の前で神様に自分たちの囃子を見て喜んでもらう渡祭(とさい)。これが夕方の6時半から始まるんですけど、各町ごと40台の祭車(さいしゃ)が延々と続いて、終わるのは夜の11時半過ぎ。自町に帰るのは2,3時になってしまいます。日を跨ぐような大ボリュームで一生懸命やっているんです。


祭を盛り上げる神聖な太鼓と炎
渡祭がメインですけど、前日にある試楽(しんがく)の叩き出しが一番盛り上がるんじゃないかな。石取祭ばやし※の練習期間が終わってから試楽が始まるまでの約3週間、いっさい鉦や太鼓の音をさせてはいけない、清掃とか清めの笹を準備する静かな期間があるんです。その期間が終わって夜の12時、春日神社の宮司が神楽太鼓をドンと鳴らすと、みんな一斉に太鼓を叩き出すから、一番やかましいんちゃうかなと思います。気持ちも一番ハイになります。
※鉦と太鼓による独特なリズムと大きな音、山車の上ではなく地面で行うことが特徴の囃子
神楽太鼓が鳴ったら提灯を上げてリレーのように町中に合図を出していくんですが、祭の中で使う提灯や行灯には斎火(いみび)っていう神聖な神社の火を使っているんです。祭車の提灯には電気を使っているところもあるけど、「御神事」って書かれた万灯(まんどう)※には必ず斎火を使っています。
※祭車の上部についている行灯型(長方形)の灯具
やっぱりろうそくの火っていうのはいいですね。うちの町内の提灯は薄張りのものを使っているので、和ろうそくの炎が提灯の外からきれいに見えますよ。
「桑名っ子」が受け継ぐ祭の活気
「石取祭」は「日本一やかましい祭」という別名を持ってますけど、「桑名っ子はおなかの中におるときから太鼓と鉦の音を聞いている」とも言われています。太鼓の音ってやっぱり体によく響きますし、親から子、おじいちゃんから孫に、祭や石取祭ばやしのことを教えている姿をよく見ます。そうやってちっちゃい子も祭に親しんでいくんですよね。
私も物心つく前からお父さんに祭のことや正装の羽織袴の着方も教えてもらいました。私の娘にも父が祭のことを教えてて、面倒見てもらっている間に祭のことを自然に覚えて、娘も祭のことが大好きになっちゃっていましたね。
祭があるからこそのコミュニケーションはめちゃくちゃあります。男女関係なしに、ちっちゃい子からおじいちゃんおばあちゃんまで全員参加って感じです。今の時代、「向こう三軒両隣」とはなかなかいかんみたいですけど、祭に参加したら隣近所の人のことが分かりますから。

昔は子どもが多かったので、子ども同士で鉦と太鼓の囃子を教えて覚えていったんです。「子供会」で、中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんがちっちゃい子を引っ張っていくんですよね。子どもたちがだんだん大きくなると真似していって、どんどん繋がっていく感じ。今は少子化の問題もあって子どもの人数が減少してきてます。やっぱり大人がちょっとフォローしなくちゃいけない、というのが出てきてます。
ただ、祭の時期は子どもを連れて帰ってくる人が多いので、にぎやかさとか活気が戻ってくるんです。来てくれるのは本当にありがたいですよね。親が自分の子どもに祭のことを教えたいんだと思うんです。やっぱり、楽しいから。


ライフ・テクノサービス広報担当。LTSブログも更新しています。推しがジャンルごとにいます(担当色が緑か青に偏りがち)。